大畑亮介

日本女性の乳がんに対する意識を高め、マンモグラフィー検診率を引き上げる。東京都の皆様のマンモグラフィー検診・乳がん検診検査の受診率の向上を推進しています。(介護・医療・健康メディア「リトリート」編集部 大畑亮介

マンモグラフィー

乳房専用レントゲン装置

乳房を圧迫することで小さな病巣まで発見

マンモグラフィは乳房を2枚の板に挟んで圧迫し、乳房を薄い状態にしてX線撮影する検査です。

この検査では、しこりになる前のごく早期の乳がん(石灰化)を発見することも可能です。石灰化は画像で白い点のように映ります。この白い点が乳房全体にちらばっている場合は良性のことが多いので、石灰化がすべてがんというわけではありません。しかし、石灰化が乳頭に向かって線状に並んでいたり、石灰化が集まっているとがんの疑いが強くなります。乳房を圧迫するため、多少の痛みは伴いますが、決してがまんできないような痛みではありません。乳がんを早期に発見するためには有効な検査なので、怖がらずに受けるようにしましょう。

月経前は乳房が張っていて、乳房を圧迫すると痛みを強く感じるため、月経後の乳房がやわらかいときに検査を受けることをおすすめします。また緊張の度合いでも痛みの感じ方は違うので、できるだけリラックスして受けるとよいでしょう。

閉経前だとガンを発見できないことも

乳腺が発達している若い年代は検査結果がわかりにくいこともあります。

マンモグラフィの画像では、がん細胞は白く映ります。しかし乳腺も白く映るため、乳腺が発達して乳腺密度の高い閉経前の女性の画像は、全体が白っぼくなってしまい、白く映っているがんを認識できないことがあります。そのため、閉経前の女性はマンモグラフィよりも、超音波検査が有効だといわれています。

閉経後になると、乳腺はだんだん萎縮して脂肪に変わっていきます。マンモグラフィの画像では、脂肪は黒く映るので、この年代以降は白く映るがんが発見しやすくなり、マンモグラフィ検査はとても有効です。

自分の型知り 乳がん検診 マンモグラフィー 弱点も(解説)

2016年6月14日、読売新聞

超音波併用で発見率1.5倍

自治体が行う乳がん検診のマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)で、異常が見えにくい「高濃度乳腺」について、読売新聞の調査に答えた自治体の7割で受診者に知らせていないことがわかった。検診で行われるマンモグラフィー、超音波検査、視触診には、それぞれに利点と弱点がある。受診者は年齢や乳房のタイプごとに適した検査を選んで受けることが大切だ。

日本女性の乳がん

日本女性の乳がん発症は、40~50歳代がピーク。こうした実態を踏まえ、乳がん検診は、40歳以上の女性が2年に1度受けるよう、国によって推奨されている。

自治体検診

自治体検診に関する国の指針は、マンモグラフィーのみを実施項目に定めている。手に触れない微小ながんや、がんとの関連を否定できないカルシウム沈着(石灰化)の発見に威力を発揮する。受診によって死亡率を減らせることが判明している唯一の検診法だ。

マンモグラフィーの弱点

ただし、マンモグラフィーには弱点もある。

乳房は〈1〉高濃度〈2〉不均一高濃度〈3〉乳腺散在〈4〉脂肪性の4タイプがあり、順番に乳腺組織の密度が薄くなる。乳腺の密度が濃いタイプの乳房を持つ人は、乳房全体が白く写ってしまうため、マンモグラフィー単独では、異常の有無を完全に判定するのが難しい。

マンモグラフィーが向かないタイプ

専門家によって見解は分かれるが、「不均一高濃度」と「高濃度」を合わせたマンモグラフィーが向かないタイプは、日本女性の5~8割に上ると指摘されている。

乳がんの見落としは20人に1人

相良病院付属ブレストセンター(鹿児島市)放射線科の戸崎光宏部長は「乳がんと診断された患者のなかで、検診でマンモグラフィーを受けていたのに見落とされたと思われる人が、20人に1人程度いる印象だ」と話す。

マンモグラフィーの弱点をカバーする超音波検査

マンモグラフィーの弱点をカバーするのが超音波検査だ。乳腺の組織が白っぽく写り、がんのしこりを黒く写し出すため、乳腺密度が濃い乳房にも適している。放射線被曝(ひばく)もない。マンモグラフィーとの併用で40歳代の早期がんの発見率が1・5倍に高まることが国の大規模研究で分かっている。

両方を受けられる制度を整備中

一部自治体は、40歳代以降の検診に超音波を組み込み、両方を受けられる制度を整えている。30歳代にも乳がん検診を行う自治体が増えてきたが、若年層は乳腺が発達していてマンモグラフィーに不向きなため、超音波で対応している。

技師の技量に左右される超音波

しかし、超音波は、死亡率の減少効果がまだ明らかではなく、国が推奨する検診法になっていない。形や大きさの違う乳房に手動の機器を当て、撮影部位をその場で判断する手法のため、技師の技量に左右される。がんの疑いを多く見つけてしまい、精密検査で異常がないとわかるケースが増え、受診者の心身に負担をかけることがあるとの指摘もある。

がん検診のあり方に関する検討会

厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」では、自治体の検診に超音波を導入することも視野に入れ、議論が行われてきた。関係学会などでつくるNPO法人「日本乳がん検診精度管理中央機構」も超音波の導入を見据え、既に3000人の技師への養成講習を済ませているという。

自分の乳房のタイプを知ることから始める

マンモグラフィーが万能ではないことを多くの受診者は知らない。一方で、40歳代以降の検診に超音波が導入されるのは、まだ先になりそうだ。この間、受診者には、まず自分の乳房のタイプを知ることから始めてほしい。自治体の多くは、マンモグラフィーが向かない人に、その事実を伝えていない。国と自治体は、受診者の目線に立ち、正しい情報提供の方法を早急に検討すべきだ。

自治体の検診メニューを調べよう

受診者は乳がん検診をどう受ければいいだろうか。

まずがん検診には、自治体が行う検診と、人間ドックなどの任意型検診がある。自治体の検診は、国や自治体が費用を負担し、受診者は無料または一部負担で済む。早期発見のため、個人が選んで受ける任意型は1万円程度かかる。

検診対象

検診対象ではない20歳代は、乳房のしこりや分泌物など、気になる症状があった時に、乳腺専門のクリニックなどを受診すればいい。多くの場合は良性と診断される。

多くの自治体の乳がん検診は40歳から

多くの自治体の乳がん検診は40歳から。ただ近年、住民の要望を受け、30歳代への検診として超音波検査だけを提供する自治体も増えてきた。心配な人は、居住する市町村の検診メニューを調べてみよう。該当する検診がない場合は、任意型検診を自費で受けることになる。

超音波を実施する自治体

40歳以上にもマンモグラフィーに加え、超音波を実施する自治体が一部出ている。マンモグラフィーに異常が見えにくいタイプがあることは事実だが、超音波だけでは検診として十分ではない。マンモグラフィーで、自分の乳房が「高濃度」なのか「脂肪性」なのかを知ることが大切だ。その上で超音波を受けるかどうか決める。

マンモグラフィーが向かない「高濃度乳腺」とわかった場合

マンモグラフィーが向かない「高濃度乳腺」とわかった場合、結果通知の際に教えてくれる自治体が一部ある。結果票に「高濃度乳腺で見えにくいタイプ」「マンモグラフィーだけでは判定できない」などの記載があれば、自治体の担当課の保健師にどうすればよいか尋ねてみよう。

自分の乳房のタイプを聞く

また、自治体が指定する医療機関で受ける検診では、医師が結果を説明してくれる場合がある。そうした機会に、自分の乳房のタイプを聞いてみよう。医師の手元には、受診者の乳腺密度の程度がわかるデータがそろっている。見えにくいタイプであることがわかったら、超音波を受けた方がいいか、医師に相談する。超音波を受ける場合は受診者が費用を支払う必要があることが多い。

乳房のタイプがわからない場合

自治体の検診結果で乳房のタイプがわからないならば、一度、乳腺専門クリニックなどで任意型検診を受け、どう対処すればよいか医師に詳しく教えてもらうことも選択肢に入れたい。異常が見えやすい「脂肪性」とわかれば、以後は2年に1度の自治体検診を継続して受ける。乳がんの早期発見には、検診のほかに、定期的に乳房にしこりがないか自分の手でチェックする方法も有効だ。入浴の際などに、しこりや分泌物がないか、まめに確認することを心がけたい。

7割が受診者に注意を促す仕組みがない

読売新聞が全国の政令指定都市、県庁所在地など、主要な131自治体に乳がん検診の実態について調査を行ったところ、回答の7割が、高濃度乳腺について受診者に注意を促す仕組みがないと答えた。電話や郵送による通知や、超音波検診の併用で、対応している自治体もあった。

■ 乳がん検診 検診法の特徴
マンモグラフィー 超音波検査 視触診
利点 石灰化など微細な異常も見つけられる 高濃度乳腺でも異常が見つけやすい しこりに手が触れればがん発見につながる
弱点 乳腺組織の密度が濃いと異常が見えにくい 検査技師の技量に左右される 早期がんなどを見つけられるか不明
国のがん検診指針 推奨されている 推奨されていない 「推奨」から外れた


乳がん発見率 超音波検査で1.5倍 マンモグラフィー併用 東北大、40代7万3000人調査

2015年11月5日、中日新聞

超音波検査追加でがん発見率が約1.5倍に

市区町村の乳がん検診で推奨されるマンモグラフィー(乳房エックス線検査)に超音波検査を加えることで40代女性のがん発見率が約1・5倍に高まったと、東北大の大内憲明教授(腫瘍外科学)らの研究チームが2015年11月4日付の英医学誌ランセット電子版に発表した。

超音波検査の大規模調査は世界初

国内の約7万3000人を対象にした解析結果。

乳がん検診に超音波検査の併用が有効である可能性を大規模調査で示したのは世界初という。死亡率の低下につながるか、今後も追跡を続けるとしている。

単独群と併用群で比較

チームは2007~2011年、全国の40代女性約7万3000人をマンモグラフィー単独群と、マンモグラフィーと超音波の併用群とに分け、検診と精密検査を経てがんと確定した症例を比較した。

併用群で早期発見の割合が高い

その結果、単独群では107人にがんが見つかり、発見率は0・33%。併用群では184人で0・50%となり、1・5倍だった。早期とされるステージ(進行度)0と1で見つかった割合は、単独群では発見されたがん全体の68%、併用群では78%となり、併用群で早期発見の割合が高かった。

超音波検査の導入は要検討

しかし、検診でがんが疑われ、細胞や組織を採取するため体に負担のある精密検査に進んだ人は、併用群で全体の12・6%、単独群では8・8%だった。研究チームは、超音波検査の導入には利益と不利益の検討が必要としている。

乳がん

乳房のがんで、乳管という組織にできることが多い。国内で年間8万人以上が診断され、女性のがんで最も多い。近年、若年層も含め増加傾向にある。死亡は年間約1万3000人。厚生労働省は検診として、40歳以上の女性に対して2年に1回、視触診とマンモグラフィーを推奨してきた。厚生労働省の検討会は2015年9月の報告書で、今後はマンモグラフィーを原則とする一方、超音波検査の併用が将来的に導入される可能性があると指摘した。全国どこの施設でも検査の質が保たれるような体制がつくれるかが課題となる。



診る・治す マンモグラフィーの検査 小さな乳がんもしっかりとらえる

2006年5月19日、中日新聞

日本人女性の23人に1人がかかる

日本人女性の23人に1人がかかるといわれている乳がん。だが、早い段階で見つければ、他のがんよりも治る率は高く、乳房を残して手術することも可能だ。

マンモグラフィー

乳房専用のエックス線撮影装置「マンモグラフィー」は、見ても触っても分からない、石灰化したごく小さながんでも確認できる検査機器。厚生労働省は2004年、40歳以上の女性は、視触診だけでなくマンモグラフィーも受けるよう指針を出している。

撮影方法

撮影は、乳房を片方ずつ、プラスチック板ではさんで均等に圧迫し、できるだけ平らにして行う。機械は左右に傾けることができ、上下と左右斜めの2方向から1枚ずつ、計4枚の写真を撮り診断する。月経開始後7-10日目くらいに受診するのが最適だ。

乳房を圧迫する理由

乳房を圧迫するのは、できるだけ少量の放射線で乳腺を鮮明に写すため。人によっては、多少の痛みを伴う場合がある。1回の撮影の被ばく量は約0・05-0・15ミリシーベルト。これは日本と米国を飛行機で往復する時に宇宙から受ける放射線とほぼ同じ。他のエックス線検査と併用しても心配ない。

愛知県がんセンター中央病院

愛知県がんセンター中央病院では2003年、従来のフィルム撮影に加えて、新型のデジタル撮影装置を導入した。「撮ったその場でモニターに映して診ることができる」と、放射線診断・IVR部の堀田勝平室長。データ管理も便利になり、患者にはその日のうちに診断結果を伝えることができるようになった。

すべてのがんが見つかるわけではない

ただ、マンモグラフィーですべてのがんが見つかるわけではない。放射線技師や読影する医師の技量も左右する。乳腺が発達している若い女性は写りにくいため、超音波など別の検査が有効な場合もある。

乳腺科岩田広治部長

愛知県がんセンター中央病院乳腺科の岩田広治部長は「若い人の乳がんも増えている。30代からは年に1回、検査を受けるのが理想的」と話す。

日頃の観察が大事

自分の乳房の状態を日ごろからよく観察したり、手で触ってしこりがないか確認することが大切。何か異変があれば、早めに受診を。